内分泌・代謝/糖尿病内科
ホルモンの異常に伴う病気を扱っています。ホルモンは私たちの体で作られて血流に乗って運ばれ、必要な場所で働き、からだの調子を一定に保つ微量な物質です。インスリンは膵臓から分泌されて血糖を下げるホルモンですが、インスリンの分泌が低下すると糖尿病が起こります。女性ホルモンが欠乏すると更年期障害、骨粗鬆症、そして動脈硬化症がおこります。 一方、肥満により蓄積された内蔵脂肪は、脂肪細胞からホルモンを分泌し、糖や脂肪の代謝、食行動に影響します。メタボリックシンドロームでは、内臓脂肪の蓄積のために、脂肪細胞から分泌されるホルモンの異常が血圧の上昇や糖尿病などをひきおこします。 その他内分泌の病気として、甲状腺、副甲状腺、副腎、脳の視床下部や下垂体などの病気があります。
糖尿病とは
日本で糖尿病の治療をうけている方はおよそ550万人、糖尿病が強く疑われる人は1,100万人程度、また予備群と呼ばれる人も、1,000万人程度いるとされており、糖尿病はわが国の国民病となっています。 ホルモンの一種であるインスリンの作用不足によって高血糖状態が持続する代謝疾患(症候群)が糖尿病です。インスリンは血糖値を下げるホルモンで、1921年にトロント大学の2人の学者により発見されました。このインスリンは、膵臓のβ細胞で作られていて、常に少量が血液中に分泌されています(基礎分泌)。そして食事をとると、血糖値の上昇にともない分泌量が増加します(追加分泌)。このインスリンが肝臓や筋肉に作用して血糖値を低下させる仕組みになっています。この仕組みに異常が生じると糖尿病が発症します。
1型糖尿病と2型糖尿病
糖尿病には、1型糖尿病とよばれる膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンの絶対量が不足して血糖値が高くなるタイプと、2型糖尿病とよばれる遺伝的な因子に不適切な生活習慣(高脂肪食、過度の飲酒、運動不足、ストレスなど)が加わって、インスリンの相対的不足や肝臓や筋肉でのインスリンの作用不足により高血糖を来すタイプがあります。 1型糖尿病では絶対的に不足したインスリンを補う必要があり、インスリンの注射が行われます。 2型糖尿病では、運動不足や食生活などの生活習慣の見直しをまず行い、次に必要に応じて薬物療法などが行われます。 適切な治療をせず放置した場合には、高血糖の状態が長く続くことにより、血管が傷つけられ、さまざまな合併症があらわれます。 しかし、糖尿病の初期にはほとんど自覚症状がなく、重症化して気づいたときには、すでに合併症が進行している事も少なくありません。
糖尿病の検査
糖尿病の診断は、血液検査により行われます。尿検査での尿糖は必ずしも陽性になるとは限りません。また仮に尿糖が陽性であっても、それだけでは糖尿病の診断は確定しません。正確には、血液検査で空腹時血糖値が126mg/dL以上、または随時血糖が200mg/dL以上,または経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)の2時間値が200mg/dL以上のいずれかで、HbA1cの国際標準値(NGSP)が6.5%以上の人は糖尿病と診断されます。
糖尿病の治療
糖尿病の治療は食事療法(1日3食バランス良くゆっくり食べる)、運動療法(1日20分の有酸素運動など)、薬物療法の3つが基本となります。そして治療の最終目標は、糖尿病がない人とかわらない寿命とQOL(生活の質)を得ることです。
治療目標
| 正常血糖を目指す際の目標 | 合併症予防のための目標 | 治療強化が困難な際の目標 | ||
| 目標HbA1c (%) | 6.0未満 | 7.0未満 | 8.0未満 | |
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*いずれも成人の場合の目標値であり、妊娠例は除く |
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お薬による治療(薬物療法)について
糖尿病の治療薬は近年著しく進歩しており、わが国で現在使用可能な薬剤として以下の10系統の薬剤があります。それぞれの病態に合わせた最適な薬物療法を選択・組み合わせて処方しております。
- α-グルコシダーゼ阻害薬;食事からの糖の吸収を遅らせて食後血糖を改善する
- ビグアナイド薬(メトホルミン);肝臓からの糖放出を抑制・インスリン感受性を高める
- イメグリミン;血糖依存性のインスリン分泌刺激薬
- SGLT2阻害薬;腎臓の遠位尿細管でブドウ糖再吸収を阻害し糖排泄を増加させる(DKAのリスクあり)
- DPP4阻害薬;血糖依存性のインスリン分泌刺激薬
- グリニド薬;速攻型のインスリン分泌刺激薬
- GLP-1受容体作動薬;血糖依存性のインスリン分泌刺激薬
- GIP/GLP-1 受容体作動薬;血糖依存性のインスリン分泌刺激薬
- チアゾリジン;インスリン抵抗性改善薬
- スルホニル尿素(SU)薬;血糖非依存性インスリン分泌刺激薬(低血糖のリスクが高い)
なお、お薬による治療を行う場合であっても、基本的な食事療法や適度な運動習慣は必要です。当院では管理栄養士による外来栄養食事指導も行なっております。
低血糖について
血糖値が下がりすぎる(血糖値が70mg/dL以下)と、強い空腹感とともに冷や汗、動悸、手指の震え、脱力感、生あくび、めまい、不安感などの低血糖症状が認めれれることがあります。このような症状が出た時には、速やかに10g程度のブドウ糖を摂取してください。外出時にはブドウ糖を持ち歩くことをお薦めしています。もし手持ちのブドウ糖がない時には、身近にある甘いもの(ブドウ糖を含む飲料など)を摂取することも有効です。なおブドウ糖以外の糖では効果が不十分となります。特にα-グルコシダーゼ阻害薬を服用している場合は、必ずブドウ糖を摂取し、症状が改善しなければ医療機関を受診してください。自動車を運転する方は、常に車内にブドウ糖を多く含む食品を常備してください。万一、運転中に低血糖の気配を感じたら、直ちにハザードランプを点滅させ、車を路肩に寄せて停止し、携行しているブドウ糖を含む食品を摂取してください。低血糖症状は処置が遅れるとさらに血糖値が低下し、やがて意識が消失したり昏睡状態に陥る危険な状態に進展する恐れがあります。なお、市販の携行ブドウ糖製剤(ゼリー状の物など)は薬局で購入できます。緊急処置のための点鼻粉末剤(グルカゴン3mg)は医師の処方が必要な医薬品です。
糖尿病の合併症
糖尿病の合併症としては
- 糖尿病性網膜症(糖尿病による目の病気で、失明する恐れがあります)
- 糖尿病性腎症(慢性腎臓病となり人工透析が必要になる事もあります)
- 糖尿病性神経障害(しびれ、感覚の麻痺、痛み、胃腸障害、立ちくらみなど)
- 虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞など生命を脅かす危険性が高い病気です)
- 脳梗塞(ラクナ梗塞とよばれる小さな梗塞が多発する場合があります)
- 閉塞性動脈硬化症(糖尿病性足壊疽などで足の切断になる恐れもあります)
などがあります。 糖尿病に合併した慢性腎臓病で人工透析に導入される方は年間約12,700人(2024年)、糖尿病のために足の切断を余儀なくされる方が年間1万人程度おられます。また糖尿病性網膜症で失明される方は、後天性の失明の原因の第2位となっています。そして糖尿病の方の平均余命は、男性74.4歳、女性77.3歳で、日本人の平均余命より約10年短くなることがわかっています。糖尿病はできるだけ早期に発見し、速やかに適切な治療を開始する事が大切です。
糖尿病性腎症
| 新しい糖尿病性腎症の病期分類2023 (日腎会誌 2023, 847‒856) | ||||
| 病期 | UACR/UPCR | eGFR | ||
| 第1期 | 正常アルブミン尿期 | <30 | >30 | |
| 第2期 | 微量アルブミン尿期 | 30-299 | >30 | |
| 第3期 | 顕性アルブミン尿期 | >300 or UPCR>0.5 | >30 | |
| 第4期 | GFR高度低下・末期腎不全期 | 問わない | <30 | |
| 第5期 | 腎代替療法期 | 透析・腎移植 | ||
| UAUC; 尿中アルブミン・クレアチニン比(mg/g), UPCR; 尿中蛋白・Cr比(g/gCr)eGFR; 推算糸球体濾過量 (mL/min/1.73m2) | ||||
脂質異常症(高脂質血症)とは
血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4種類の脂質がとけこんでいます。この中で特にコレステロールと中性脂肪が大切です。 コレステロールには善玉と悪玉があります。血液中のLDL(悪玉)コレステロールが多過ぎると、動脈の壁の中に入り込んでプラークという固まりができ、動脈の壁が厚く硬くなり、血管の内側は狭くなります。反対にHDL(善玉)コレステロールは、血管内の余分なコレステロールを回収し、血管内をきれいにして動脈硬化を防ぐ働きがあります。また中性脂肪が多いと、HDL(善玉)コレステロールが減り、LDLコレステロールが増えやすくなります。日本人の死因の第2位と3位を占めているのは、狭心症や心筋梗塞などを含めた心臓病と、脳出血や脳梗塞などの脳卒中ですが、これらは動脈硬化が原因となって起こる血管の病気です。
脂質異常症(高脂質血症)を放置してはいけない理由
動脈硬化は、心臓からからだの各部分へ血液を運ぶ動脈が硬くなるもの(動脈硬化症)で、動脈の内側の壁にコレステロールがたまって血管が盛りあがって狭くなり、それとともに血管が硬くもろくなります。そのため、血液が流れにくくなり、血管に血液の固まりがつまりやすくなるのです。 さらに動脈硬化は高血圧を悪化させる要因でもあり、また慢性腎臓病の原因ともなります。
検査
脂質異常症を診断するには血液検査が必要です。空腹時(12時間の絶食後)に血液検査をして,血液中の悪玉コレステロール(LDL-C)が140mg/dL以上、善玉コレステロール(HDL-C)が40mg/dL以下、中性脂肪(TG)が150mg/dL以上のいずれかに該当する場合に脂質異常症と診断されます。脂質異常症は、たとえ自覚症状はまったくなくても、早く見つけて治療することが大変重要です。動脈硬化の程度を調べる方法として、頚部の超音波検査により頸動脈(首の動脈)を観察すると、血管の壁の厚さやプラークの沈着、血流の速さが観察でき、動脈硬化がどの程度進行しているかわかります。これにより実際に症状が出る前から動脈硬化による病変が出現しているか、またどの程度まで進行しているかを知ることができ、将来の危険性を予測し生活管理や治療の方向を決める上で役立ちます。
治療方法と治療の目標
食事療法、運動療法(有酸素運動)、禁煙などの生活習習慣の改善を行なった上で、必要に応じて薬物療法を追加します。食事療法については、管理栄養士による外来栄養食事指導を行なっております。
冠動脈疾患(心筋梗塞や狭心症など)を予防するための目標値
| 脂質管理目標値 (mg/dL) | LDL-C | non HDL-C | |
| 低リスク | <160 | <190 | |
| 中リスク | <140 | <170 | |
| 高リスク | <120 | <150 | |
| 糖尿病の高リスク* | <100 | <130 |
🔸リスク(低中高)については、個人毎に異なるため担当医にご相談ください。*糖尿病で網膜症、腎症、神経障害のいずれかの合併症があるかまたは喫煙者は「糖尿病の高リスク」となります。 上記のLDL-CおよびnonHDL-Cの管理目標が達成された場合、以下のT G、HDL-C値の管理を検討します。
| TG | HDL-C | ||
| 脂質管理目標値 (mg/dL) | <150 | ≧40 | |
| <175 (非空腹時) |



