腎臓内科
腎臓内科では、尿検査異常の診断から人工透析(血液浄化)
「慢性腎臓病」(CKD;Chronic Kidney Disease)では適切な降圧療法による糸球体保護や減塩•
末期腎不全治療では、
慢性腎臓病(CKD)について
慢性腎臓病(CKD;Chronic Kidney Disease)とは、尿検査で蛋白尿(0.15 g/gCr 以上)またはアルブミン尿(30 mg/gCr 以上)が認められたり、腎臓の働きを表す糸球体濾過量 (GFR) が、60mL/分/1.73m2未満に低下した状態が3ヵ月以上持続する状態を指します。この病気の初期にはほとんど自覚症状がなく、尿検査や血液検査を受けなければ知らずに過ごしてしまう事の多い病気です。
最近の研究で日本人の成人の5人に1人がCKDとされ1)、日本人の国民病とも言われています。この病気を放置すると、腎臓の働きが低下してやがて人工透析が必要な腎不全に進行することがあります。CKDの患者さんは、腎臓の働きが正常な人と比較して心筋梗塞や脳卒中などの心血管障害で死亡する危険性が高くなり(心腎連関)、注意が必要です。
最近では高血圧による腎硬化症や糖尿病による糖尿病性腎症の方が多く、高血圧や糖尿病は早期に発見してしっかり治療する事が大切です。
健康診断で尿検査に異常がある、糖尿病の疑いがあるといわれた方、血圧が高めである方は注意が必要です。すでに糖尿病と診断され何らかの治療をお受けの方は、年に2回程度、定期的に尿中微量アルブミンの検査が推奨されています。
CKDはその原因や進行度(ステージ*)に応じて治療目標を定め、適切な管理を行うことが大変重要です。腎臓専門医のもとで、最新の科学的根拠に基づいた標準的な治療法を駆使することにより、腎機能の悪化を予防し腎不全への進行を遅らせたり、食い止める事が可能になってきており、一部には腎機能の改善が認められる方もおられます。なお、科学的な根拠のない民間療法や迷信等に惑わされて、専門医への受診が遅れることは、病状を悪化させるのみならず大変危険です。
1) Arisa Kobayashi, et. al. Clin Exp Nephrol. 2025, 29:276-282.
CKDの重症度分類(GFR区分)
| CKD ステージ | 重症度 | eGFR (mL/分/1.73m2) | |
| G1 | 正常または高値 | ≧90 | |
| G2 | 正常または軽度低下 | 60-89 | |
| G3a | 軽度〜中等度低下 | 45-59 | |
| G3b | 中等度〜高度低下 | 30-44 | |
| G4 | 高度低下 | 15-29 | |
| G5 | 高度低下〜末期腎不全 | <15 |
(エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023より引用一部改変)
CKDの治療
1 日6g以内の塩分制限など適切な食事療法、適度な運動(ウオーキング等)、肥満の改善、禁煙、過度な飲酒は控えるなどの生活習慣の見直しに加えて、「腎保護薬」による薬物療法を行います。腎保護薬とは、今残されている腎臓の機能をできるだけ長く保たせるよう腎臓を守るお薬です。大規模な臨床試験により腎保護効果が科学的に証明された薬剤として以下の4系統のお薬があります。
- アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB);アジルサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、イルベサルタンなど
- アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI);サクビトリルバルサルタン
- 非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(第3世代MRA);フィネレノン、エサキセレノン(高血圧の適応のみ)
- ナトリウム-グルコース共輸送体2阻害薬(SGLT2i);ダパグリフロジン(先発品のみ適応あり)、エンバグリフロジン、カナグリフロジン(2型糖尿病合併のみ)
その他投与を考慮してもよい薬剤;球形活性炭吸着薬
血圧、尿蛋白の有無とその程度、糖尿病の有無、体液貯留の状態(むくみの程度など)、電解質(特にカリウム)、心臓の状態、その他の合併症など患者様の病態を腎臓専門医が総合的に判断し、それぞれの患者様ごとに最適な薬剤の組み合わせで処方し治療を行います。
腎臓内科で扱う病気には以下のものがあります
- 慢性糸球体腎炎(日本人に最も多いのはIgA腎症;指定難病66)
- 高血圧および腎硬化症
- 糖尿病性腎症
- 多発性のう胞腎(指定難病67)
- 尿細管間質性腎炎
- 痛風腎
- 急速進行性糸球体腎炎(RPGN)*(指定難病220)
- ネフローゼ症候群 (膜性腎症、微小変化型腎症、巣状糸球体硬化症等)
- ループス腎炎
- IgA血管炎(紫斑病性腎炎) (指定難病224)
- 妊娠中毒後遺症
- アミロイドーシス
- アルポート症候群(指定難病218)
- ファブリー病
- IgG4 関連腎臓病 (IgG4‒RKD)
- ネフロン癆(指定難病335); 乳児型、若年型、思春期型
- 良性家族性血尿(菲薄基底膜病) などがあります。
* RPGN (急性進行性糸球体腎炎/急速進行性腎炎症候群)
糸球体腎炎のうちで短期間(数週から数カ月)に腎機能が急速に低下する病気を「急速進行性糸球体腎炎」といいます。血尿(目に見える肉眼的血尿を認めることもあります)や蛋白尿が出現し、時に全身症状として発熱、倦怠感、関節痛、筋肉痛など風邪と紛らわしいが症状や、むくみや高血圧を伴うこともあります。この病気は出来るだけ早く専門医による診断と治療を開始することが重要で、放置すれば腎不全に至り、人工透析が必要な状態に陥ることがあります。健康診断で血尿や蛋白尿を初めて指摘されたという方は、早めに腎臓内科を受診して詳しい検査をされることをお薦め致します。また,風邪症状がなかなかよくならない、熱が下がらない、尿の色が濃くなってきている、尿量が少ない等の症状がある場合は,腎臓内科を早急に受診してください。
IgA腎症について
IgA腎症は1968年にフランスのBergerらにより初めて報告された疾患で、フランスでは別名ベルジェ病と呼ばれています。検尿で血尿や蛋白尿を認め、腎臓の糸球体に免疫グロブリン のIgAという蛋白が沈着する病気で、多くは無症状で慢性に経過しますが、進行すると腎機能が低下し、高血圧の合併や腎不全に至ることがあります。この病気を正確に診断するためには腎生検という腎臓の組織の一部採取して、顕微鏡で調べる病理検査が必要です。日本をはじめアジア地域に多くわが国で腎生検を受けた方の約1/3がIgA腎症です。
【用語解説】Q&A
健康な人でも尿中にはわずかな蛋白がでていますが、1日に150mg以上持続的に排泄されている場合を蛋白尿と呼びます。この場合腎臓に何らかの障害があると考えられます。
尿中に赤血球が排出される状態を血尿といいます。尿の沈殿物を顕微鏡で観察し400倍の視野で赤血球が5個以上認めれられる場合に異常とします。これを顕微鏡的血尿と呼びます。これは肉眼で尿を見てもわかりません。一方、 目で見て明らかに尿の色が 紅茶色やコーラの色のように見える場合は、肉眼的血尿と呼び区別しています。なお蛋白尿と顕微鏡的血尿が同時に認められる場合は、慢性糸球体腎炎の可能性が高いと言えます。蛋白尿や血尿はCKDの早期発見に大変有用な所見です。
CKDではCVDの発症率や死亡率が高くなること、この両者の危険因子の多くが共通である事が知られており、CVDではCKDの有無を確認する事が重要とされています。CKDとCVDはきわめて密接な関連があるため、このことを心腎連関(Cardio-renal Interaction)と呼びます。



